リン
通夜が終わり、
各々が棺の中の母の顔を見て、
お線香を立て、
リンを鳴らしてくれた。
リーン。
凄まじく綺麗な音色がした。
音が木霊し、
その清らかな音に姿勢が正される。
そんな音だった。
親戚のトモくんが合掌していた。
周りの知人たちが口々に言った。
「今の音、いいね」「綺麗だったな」
国内最強の交響楽団で演奏をしてるトモくんのリンの音色。
ちょっぴり嫉妬を感じた僕は、
その夜、誰もいなくなった会場で何回も練習をした。
そして発見したのだ。
内側を叩くのだ。
翌日の告別式はバタバタしていて、
リンを叩く時間もなく、
お披露目することはなかった。