9/6 18時まで配信中です


アタフタ、アタフタ、アタフタの毎日だった。


無知ゆえに走れた。
方南ぐみのチケット担当のサンライズ東京の北野さんと毎日がアタフタだった。
北野さんも配信は初めてなのだ。
「配信業者ってなんですか？」僕は泣きつく。
「わかりません、勉強します」北野さんの声は悲痛だ。
「やるんですよ、何があっても28日に配信やるんですよ」
「な、な、なんとかします」。だが保障は何ひとつない。



感染対策
裏でそんなことが起こってるとは知らない制作チームは稽古の準備に入っていた。11人の出演者とスタッフが余裕あるあるのソーシャルディスタンスが確保できる稽古場を抑え、感染対策予防グッズ購入に奔走していた。

もっとも厄介と言われてる靴裏菌を稽古場に持ちこませないための足裏除菌マットや除菌グッズ、マスクはもちろんフェイスシールド。所属のLDHからも足裏除菌マット、フェイスシールド、サーキュレーターの提供があった。


稽古は稽古時間を短縮し、30分間に一度の10分休憩and換気を徹底した。
正直に言う。稽古どころじゃなかった。休憩時間になるたびに密になるなよー会話するなよーと願った。



万が一に備えた​
プラットホームはeプラスと決定したが配信業者は見つからない。
その場合は生配信を諦め、編集で仕上げたのちの後日配信を覚悟した。SNSには28日生配信と謳っていたが仕方がないと、諦めかけたとき「配信業者が見つかりましたー」と北野さんからの吉報が飛び込んできた。
「やった！28日に生配信できるんだね」僕の声は高鳴った。
「いえ、会場で一度チェックしてOKが出ないとチケットの売り出しもできません」
「なぬ！　チケットが売れない」



せめてもの償い
出演者と舞台スタッフにはこのアタフタ劇のことは言えずにいた。
彼らは生配信に向けて稽古に挑んでるのだ。
こちらの無知のせいで後日配信になるなんて言えないのだ。
小心者の僕は、最悪のことを想定して、その償いとして稽古でこんなことを言ってしまった。
「みんなの読みを聞いててグッときたなー。当日、海軍の白制服で読んでもらおうと思います」
役者たちは「おおおーっ」と喜んだ。


稽古終わりに制作スタッフに詰められた。

「本気ですか！採寸どーするんですか！衣装さん用意できるんですか！今から無理です」
​「無理なの？　さっきいい顔して言っちゃったよー」


このとき、生配信予定日まで一週間を切っていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく
 

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