10数年ぶりの再会

2023/09/09

「警視庁」と書かれた封筒が自宅に届いた。
なにともいい気持ちはしない。
封を開けると「弁明通知書」の文字。

言い分があるなら弁明しなさい、ということだ。
理由は放置違反金の納付命令に関する件、らしい。
放置？
いったいなんのことだ？

警視庁に電話をして内容を訊いた。
方南ぐみ所有の原付バイクが放置されてるので違反金を支払いなさいとのことだった。
原付バイク？
「誰のですか？」
「ですから方南ぐみさんのです」
そのバイクの種類特徴を訊ねて…。

あっ…。ああああーと思い出した。
10数年前紛失したバイクだ。
出てきた？　今？

それからが大変だった。
区役所に「廃車手続き」のことを問い合わせ、
違反切符を取り締まった警察署に出向いての説明、
廃車手続き完了後にバイク移動してくれる業者探しなどなど。

「廃車手続き」にはナンバープレートを外さなければならず、
放置されてる町名番地を聞き、そこに行った。
10数年ぶりの対面。
ボロボロになったそのコがいた。
両方のミラーはなくなり、
シートは破かれ、
車体には幾度も転倒したのか、無数の傷。

あの頃、社員や劇団員の足として重宝されていた。
知らぬ間に駐車場から消え、
ま、誰かが乗ってるんだろうと…。
盗難とは思わなかった。
その頃、事務所の引越しもあってすっかりと失念。

10数年ぶりの再会。
乗ってあげたいと思った。
立ち会ったバイク屋さんが言った。
ここまでボロボロになったら修理するより廃車のほうが…。
ナンバープレートを外すとき、
バイクに触れ、今までありがと、ごめんねと囁いた。